PV急増で美人時計がさくらインターネットと組んだワケ

「広告を作る人も見ている人も、みんなが楽しめる、今までになかったものを作りたかった」。こう語るのは株式会社美人時計取締役でプロデューサーの中屋優大氏だ。新しい広告表現を模索するにあたって最初に目指したものは、広告を見る人も喜んで見続けるようなもの。そのためにアナログとデジタルの融合や、時間による変化を取り入れた「4次元広告サイト」という新しいビジネスモデルを模索したという「便利で高度な機械に対しても、ぼくは人の温もりや癒しを求めてしまいます。同じような感覚を持っている人なら共感してもらえるかなと思いました」(中屋氏)

瞳に映り込む光線も計算の上、完璧にセッティングされたスタジオ撮影のグラビア・アイドル。こうした写真と美人時計の写真は様子が違う。街角で何気なく撮影されたような写真、時刻を知らせるボードの文字は被写体であるモデルさん自身による個性的な手書きだ。美人時計のモデルは学校や職場にいそうな“美人”たち。そんな美人が1人あたり4分間で4ポーズする。ポーズは徐々に動きのあるものに変わっていくなど変化に富む「撮影は朝、夜、ロケーション、ポーズのパターンなどにこだわり、ユーザーの興味につなげるよう工夫しています」(中屋氏)

1分ごとに表示する写真が切り替わり、24時間60分1440枚の写真を表示する。文字で書いてしまうとそれだけのことだが、美人たちの内面の優しさや明るさ、あるいはいたずらっぽさ、そんな性格が外にこぼれだすかのような自然な表情は、みんないい意味で個性的。ついつい眺めてしまうオートリロードでぼんやり眺めることができるのが、美人時計がウケているポイントの1つだ。これは広告の4次元展開を前提に考え出したモデルだという。通常の広告とは異なり、広告主は、時間軸に沿って広告を打つことができる。例えば夕方になると特定銘柄のビールの広告を出すといった具合に2009年夏に取締役兼CTO(最高技術責任者)として入社した中根弘祥氏は当時を振り返ってこう述べる「あるホスティング事業者のサービスを使って10台の仮想サーバに移行していたのですが、思うように運用できませんでした」(中根氏)

仮想サーバは、実際の物理サーバ数より少ない台数のサーバ上で動くが、どの物理サーバ上で動くかは利用者から見えない。しかし、実はこうしたサービスでは「どの程度ヘビーに使うユーザーと物理サーバをシェアするか」は結構大事なポイントとなる。そこで、利用申請のタイミングをずらすことで仮想サーバの稼働する物理サーバがバラけるように、という対処をしていたという美人時計ほどの人気サービスともなれば、ほかのサービスとは段違いのトラフィックが発生する。「3、4時間で数GBのアウトバウンドトラフィックが発生することもあり、その当時利用していたホスティング事業者から上位プランに移行してくれと言われるようになりました。そうこうしているうちに定期メンテナンスの回数が異様に増えていったんですよね……」このときに移転先として検討を始めたのが、さくらインターネットのホスティングサービス「専用サーバ Platform St」だったという専用サーバ Platform Stは、1台ごとのホスティングである専用サーバと、ラックを借りて自前でシステムを組むハウジングとの中間に位置するサービスだ。プランにもよるが、520台程度のサーバとネットワーク機器などを組み合わせたシステムを構築できる。バラバラに専用サーバを借りるよりもシステムが組みやすく、自前でハウジングするよりも手軽で安いというサービスだ。ファイアウォールや監視サービスは標準で利用できるシステム単位でレンタルできる専用サーバ Platform Stだが、中根氏が“感動した”というのは、導入にあたってのコンサルティングだ「最初は1台分だけ、さくらインターネットのサーバに美人時計のトラフィックを振り向けました。それで特性を一緒に見ながら仕様を検討してくれました」(中根氏)

美人時計のトラフィックが多いといっても、さくらインターネットからすれば、必ずしも特別なものではない。さくらインターネットでは、すでにより大きなサービスをホスティングで運用した実績もあり、トラフィックの量は想定内だったという「今後は安定性やパフォーマンスのバランスからロードバランサーの導入も考えるものの、当面はDNSラウンドロビンで様子を見ながら運用しよう、ということになりました」(中根氏)

複数のWebサーバをクラスタ化して負荷分散を行う場合、シンプルなDNSラウンドロビンを使う手法のほかにも、OSSを使う方法や専用アプライアンスを導入する方法まで複数の選択肢がある。パフォーマンスや安定性を考えれば、アプライアンスがベターだが、導入の手間やコストはDNSラウンドロビンが最も有利。このときの判断はインフラエンジニアの腕の見せ所だが、サービス開発を行うベンチャーとしては、開発エンジニアのほかに専門のエンジニアを雇い入れるのが難しいケースもあるさくらインターネットでは、美人時計のサービスの特性まで一緒に観察して、経験に基づいてベストな構成を勧めてくれたという。足繁く事務所に通ってくる、さくらインターネットの担当営業は「システム導入は相談にのってなんぼ。ハイどうぞ、なんていう営業では売れませんよ」と笑ったという結局、美人時計では専用サーバ Platform St プランS、CentOS搭載のXeonサーバ5台に1000M共有回線オプションを追加(標準では10M専有回線)して導入した。初期費用は85万4000円、月額料金32万5500円。スキルの高い運用エンジニアを自分たちで雇うことを考えれば、これは割安だと中根氏は話す。インフラとサービスは密接に結びついているため、今後も相談できるパートナーがいるという安心感。目に見えるコストばかりでなく、そうした安心感が、美人時計がさくらインターネットを選んだ本当の理由だったという美人時計は2009年末から2010年初頭にかけて、無事にさくらインターネットへとシステム移転を終わらせた地方展開も有望だ。「東京では1日じゅう声をかけても誰も撮影させてくれないこともありましたが、札幌では行列ができて困ったこともあるほど」(代表取締役 早剛史氏)これはモデルとなる女性たちばかりでなく、地方のメディア関係者でも同じという。地方経済の地盤沈下が進んでいるのはどこも同じで、そうした地方のメディア企業に勤める中堅社員たちは、何か新しい試みをしないと自分たちの将来が危ういと感じている美人時計はシンプルなアイデアであるが故に、今後も多様な展開が考えられる。多地域展開だけでなく、男性版時計「美男時計」や、声優が音声で時刻を知らせる「美声時計」など水平展開も同時進行中だ。北海道、京都、美人時計ナイト(クラブ)、ギャル、美男など本家の姉妹アプリのほかに、世界バージョンとしてパリジェンヌ時計、アメリカ版、イタリア版、ロシア版、台湾版などの企画が進行中という。モバイルでは、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアに対応も考えている早氏は今年は本格的なマネタイズにも乗り出すという。例えば、ガイドブックに載っているようなベタな場所ではない、現地の人だからこそ知っている名所やスポット案内を兼ねた美人写真など、見る人の目を楽しませつつ有効な地域アピールができる可能性がある。地方展開に名乗りをあげる代理店も増えてきたというこうした多様なサービス展開を進めていく中で、安定してシステムを運用、拡張していくことは、非常に重要なミッションとなってくる。この意味で、さくらインターネットとのパートナーシップは、美人時計というサービスの裏方を支えるキモとなってきそうだ。

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