ショパールの真骨頂は男性用にあり

機械式時計を見る時は、ムーブメントの文字盤側に注目している。普段は見えない文字盤側。しかし個人的には、時計メーカーの設計思想を現すポイントだと思っている。ムーブメントは文字盤側を見ろ、である僕の見た限りでは、ムーブメントの文字盤側に隙のない時計はいくつかある。ひとつは、以前取りあげたモリッツ・グロスマン。もうひとつが、ショパールの、とりわけマイクロローターを載せた「」シリーズだ。何が違うのかというと、無駄な穴が少ないこと、部品の立て付けがしっかりしていることだ。正直、穴が多くても機能に問題はない。そして今の時計ならば、部品の立て付けはどれもしっかりしている。しかし高級といわれる時計は、見えないところにお金をかけるのを良しとする。着物の裏地に凝るようなものだ。だから専門家が見ても過剰なほど、文字盤側をきちんと作り込むショパールと聞けば、ダイヤモンドをちりばめた「ハッピーダイヤモンド」や「ハッピースポーツ」を思う方がいるかもしれない。得意とするのは女性用のジュエリーウォッチであり、一点数千万以上もするハイジュエリーだ。しかしショパールのは、生半な老舗の時計よりも、はるかに時計らしい作りを持っている。第一作の発表は年。これは今のシリーズが載せる、という自社製ムーブメントを搭載していた普通、ムーブメントを新造するときは、どの会社も作りやすい手巻きから作る。自動巻きやクロノグラフといった、複雑なものは論外だ。しかしショパールは、一作目で、小さなローターを備えた薄い自動巻きを作り上げてしまった。町工場がロケットを飛ばすようなものだが、仕上げは見事だったし、それ以上に設計は卓越していた。古典的な高級機の設計(とりわけ懐中時計の設計)を、巧みに盛り込んでいたのである一例が自動巻き機構だ。ゼンマイを巻き上げるローターが小さいと、ゼンマイが巻き上がりにくい。対してショパールスーパーコピーは、凝ったツメ式の巻き上げ機構を採用した。これはスペースを取るため、薄型ムーブメントには向かないとされる。しかしショパールは、バネを多用することで、自動巻きを小さくすることに成功した。ただしあまりにも凝りすぎたため、生産性は良くない。今の設計者ならば、決して採らないものだこういう凝り性は、文字盤でいっそう明らかだ。時分針を回す歯車は、巨大な板で抑えられている。抑えることで、理論上ガタツキはなくなるが、歯車と板の抵抗が増える。それに対処すべく、ショパールはそこにルビーベアリングを埋め込んだのである。理論上、針の動きはスムーズになる。しかし僕はこの系以外に、これほど凝った設計を見たことがない。過剰に過ぎる、とさえ思うが、ショパールは第一作から、最良を目指したのだろう。果たしてこれは、現時点における、自動巻きの最高峰となった。まったくの私見だが、超高級な自動巻きに限っていうと、系に比肩するのはパテック フィリップ時計コピーのと、オーデマ ピゲの系ぐらいではないかもちろんこの優れたムーブメントにも弱点はある。時分針を動かす番車が中心にないため、注意深く時間合わせをしないと、針飛びが起きることがある。また薄いムーブメントのため、扱いにも気を使わねばならない(今は、頑丈に作ったカリテフルリエというモデルもある)。普通のまでは、ムーブメントの角の仕上げも、手作業ではなく、機械によるものだ。しかし、である。ショパールは、これほど手間のかかった機械を、いまだに量産し続けている。しかも価格は、質を考えれば決して高くはない。誰も気づかない文字盤側を、きちんと作り込むショパール。このメーカーには、良い意味での矜持(きょうじ)がある。